「Next.jsとTanStack Queryの効果的な連携方法」

はじめに

近年、Webアプリケーション開発においてNext.jsTanStack Queryの組み合わせが注目を集めています。Next.jsはReactベースのフレームワークであり、サーバーサイドレンダリング(SSR)や静的サイト生成(SSG)をサポートしています。一方、TanStack Queryは、データ取得とキャッシュ管理を簡素化するための強力なライブラリです。本記事では、Next.jsとTanStack Queryを効果的に連携させる方法について、既存の技術との比較や具体的な使用例を交えながら解説します。

Next.jsとは

Next.jsは、Reactの機能を拡張してSSRやSSGを実現するためのフレームワークです。ページ単位のファイルベースルーティング、APIルートのサポート、イメージ最適化など、多彩な機能を提供しています。これにより、開発者は複雑な設定を省いて、高性能なReactアプリケーションを迅速に構築できます。

TanStack Queryとは

TanStack Query(旧React Query)は、非同期データの取得とキャッシュ管理を効率化するためのライブラリです。データのフェッチ、キャッシング、更新、エラーハンドリングなど、データ取得に関する多くの課題を解決します。React Hooksを活用して宣言的にデータ取得を行うことができ、コードの可読性と保守性が向上します。

Next.jsとTanStack Queryの連携のメリット

効率的なデータ取得とキャッシュ管理

TanStack Queryの強力なキャッシング機能を利用することで、データ取得の効率が飛躍的に向上します。同じデータへの複数回のリクエストを避け、ネットワーク負荷を軽減します。また、データの自動更新機能により、ユーザーに常に最新の情報を提供できます。

開発速度の向上

データ取得に関するボイラープレートコードが削減され、開発者はビジネスロジックに集中できます。Next.jsのSSR機能と組み合わせることで、初期レンダリング時にもデータをシームレスに提供できます。

ユーザーエクスペリエンスの改善

高速なデータ取得と更新により、ユーザーはスムーズな操作感を得られます。ローディング状態やエラー状態の管理も容易になるため、UIの品質が向上します。

既存の技術との比較

Reduxとの比較

Reduxはグローバルな状態管理に優れていますが、非同期処理の実装が複雑になる傾向があります。一方、TanStack Queryはデータ取得とキャッシュに特化しており、非同期データの管理がシンプルです。データフェッチングが中心のアプリケーションでは、TanStack Queryの方が適しています。

Axiosとの比較

AxiosはHTTPクライアントとして広く使用されていますが、キャッシュや自動更新といった高度な機能は自前で実装する必要があります。TanStack Queryはこれらの機能を標準で備えており、開発効率が高まります。

Next.jsとTanStack Queryの効果的な連携方法

セットアップ

まず、プロジェクトにTanStack Queryをインストールします。

npm install @tanstack/react-query

次に、アプリケーションのエントリポイント(通常はpages/_app.js)で、QueryClientQueryClientProviderを設定します。

import { QueryClient, QueryClientProvider } from '@tanstack/react-query';

const queryClient = new QueryClient();

function MyApp({ Component, pageProps }) {
  return (
    <QueryClientProvider client={queryClient}>
      <Component {...pageProps} />
    </QueryClientProvider>
  );
}

export default MyApp;

データ取得の実装

任意のコンポーネントでuseQueryフックを使用してデータを取得します。

import { useQuery } from '@tanstack/react-query';

function Users() {
  const { data, error, isLoading } = useQuery('users', fetchUsers);

  if (isLoading) return <p>Loading...</p>;
  if (error) return <p>Error: {error.message}</p>;

  return (
    <ul>
      {data.map(user => (
        <li key={user.id}>{user.name}</li>
      ))}
    </ul>
  );
}

サーバーサイドレンダリングとの統合

Next.jsのSSR機能を活用して、初期レンダリング時にデータを取得することが可能です。これにより、ユーザーはページロード時にすぐにコンテンツを閲覧できます。

import { dehydrate, QueryClient } from '@tanstack/react-query';

export async function getServerSideProps() {
  const queryClient = new QueryClient();

  await queryClient.prefetchQuery('users', fetchUsers);

  return {
    props: {
      dehydratedState: dehydrate(queryClient),
    },
  };
}

クライアント側では、サーバーから送られたデータを復元して使用します。

import { Hydrate } from '@tanstack/react-query';

function MyApp({ Component, pageProps }) {
  return (
    <QueryClientProvider client={queryClient}>
      <Hydrate state={pageProps.dehydratedState}>
        <Component {...pageProps} />
      </Hydrate>
    </QueryClientProvider>
  );
}

効果的な連携のためのベストプラクティス

キー管理の徹底

クエリキーはデータのキャッシュとリフェッチに重要な役割を果たします。一貫性のあるキー命名規則を設けて、予期しないキャッシュの問題を防ぎます。

データの正規化

キャッシュデータを正規化することで、データの重複や一貫性の問題を解消できます。必要に応じて、キャッシュ更新時にデータをマージするロジックを実装します。

ミューテーションの活用

データの更新操作にはuseMutationフックを使用します。Optimistic Update(楽観的更新)を実装することで、ユーザー体験を向上させることができます。

エラーとローディング状態の統一

アプリ全体で一貫したエラー処理とローディング表示を行うために、カスタムフックやコンポーネントを作成します。これにより、UIの統一感とコードの再利用性が高まります。

まとめ

Next.jsとTanStack Queryを組み合わせることで、モダンなWebアプリケーション開発におけるデータ取得と状態管理が大幅に効率化されます。既存の技術と比較しても、開発速度やユーザーエクスペリエンスの面で多くのメリットがあります。ぜひ本記事で紹介した方法やベストプラクティスを参考に、プロジェクトに取り入れてみてください。

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